だったらずっと悲しいままでいい

歌に悩んだ時は父に相談していました。「こういう声を出したいんだけど、どうすればいいかな?」と聞くと、「サックスで吹くとしたら、息のスピードはこれくらいで、息の方向はこれくらいだと出るから、そんなイメージで歌ってみたら?」と。その通りにすると、本当に歌えるようになりびっくりしました。

また、サックスで吹けないフレーズがあったときは、「まずは楽器をおいて歌ってごらん」と。実際に歌ってみると最初は歌えなくて、歌えるようになるまで練習し、それからサックスで吹いてみると、不思議とちゃんと吹けるようになるんです。

父は、2021年に亡くなりました。69歳でした。もう三回忌も済んだのに、父がいなくなったことがまだ信じられず、今もふとした時に泣いてしまいます。

その一方で、これまで「悲しい」という感情はマイナスなものだと思っていたのですが、今は父を思い出して悲しくなるのは悪いことではない、と考えられるように。悲しいのは、父を忘れていないということ。だったらずっと悲しいままでいいや、と思うようになりました。