自分の将来に影響することになるとは

まずは弟の借金。自家用車2台の代金を含め、多額のお金を母が弟に出していることが分かりました。問い詰めると、弟はなんと、母以外にもいろいろなところから借金をしている、と白状しました。総額数百万円。家庭持ちの弟が生活を立て直せるよう、祥子さんが弟の借金をぜんぶ肩代わりしました。自分が銀行からまとめて借り入れ、弟に毎月、自分に返済させています。

母が最後に暮らしていた家は、遺言どおり祥子さんが継ぎました。母の死後、傷んでいたところを、祥子さんは、リフォームローンを組んで修繕しました。家族が何かの折に集まれる場所を残したい。みんなで母の思い出に浸りたい、と思ったからです。だから祥子さんは毎月、東京から新幹線と在来線を乗り継いで4時間もかけて、通っています。庭の手入れをしたり、風を通したりするためです。

実は、実家には、離婚して出戻った妹が母と同居していました。メンタルの不調を訴え、お金も、食事も生活の面倒も、すべて母が見ていました。母の死後、母の代わりに祥子さんがなし崩し的に面倒を見続けるのはつらい。光熱費や固定資産税は祥子さんが払っています。せめて数千円でもいいから、家賃を入れてくれ、と相談したら、妹は出て行ってしまいました。そのまま音信不通です。家族全員のハンコが揃わないため、いまだ相続登記ができないままです。そして、せっかくみんなで集まろうと思った家なのに、祥子さん以外のきょうだいは、誰も寄りつきません。

庭には小さな畑もあります。草むしりをしていると、よく小さな発見をしました。「あ、こんなところにウリ植えてる」。よく、母と一緒に種を蒔いたり、野菜を育てたりした祥子さんですが、自分も知らないうちに母がしたことを、畑仕事をしていて気付きました。みごとにプチトマトがなって、隣近所にお裾分けに行くと、そこで母の話を教えてもらったり。この家を買った時に母が植えた木が、毎年みごとに実を付けます。果実は近所や友だち、弟たちにも届けます。「ママが植えた木に実がなったよ」

祥子さんは、それで良いと思っていました。東京に出て大企業で働いている長女の自分が、家族のために出来ることはするつもりでいました。まるで長男です。一族の稼ぎ頭として、弟妹たちも支えています。当時は、それが自分の将来に影響することになるとは、祥子さんは思ってもいませんでした。