姉妹といえど、関係性は難しい

それでも、実家の土地が首都圏にある、というのはすごい利点です。モトザワは紀美子さんに尋ねました。

「実家の土地が、お母様のところとお姉様のところに分筆されているなら、お母様にもしものことがあったら、実家の土地と建物は紀美子さんが売り払っちゃったら良いんじゃないですか? で、その土地建物の代金で、サ高住に入るなりマンションを買うなりすれば良いのでは?」

「または、お姉様に、実家の土地・建物を買い取って貰ったらいいのでは? そもそもお母様が万一の時は、お母様の財産である土地・建物は、お姉様と分けることになるんですから。お姉様は実家の土地に住み続けるでしょうから、紀美子さんは遺産分与分を現金で貰えば良いじゃないですか」

紀美子さんは一瞬、きらりと目を輝かせました。「ほう。そんな手がありますか」。希望に満ちた様子で真剣に考え始めました。が、すぐに溜め息をつきました。「やっぱりダメです。姉が大変です。きっとうるさいことを言ってくるので」。

せっかく紀美子さんがお金を出した実家を活用することも、遺産分与でもらえるはずの土地を活用することも、考えられないなんて。姉妹といえど、関係性は難しいものです。

『老後の家がありません』(著:元沢賀南子/中央公論新社)