石畳の遊歩道「さわらびの道」

華やかだった物語は、さながら「春」から「秋」、「昼」から「夜」に転じるよう……。それゆえ「宇治十帖」は紫式部ではない別の人、しかも男性が書いたものだと主張する研究者もいるそうです。

宇治川には、宇治のシンボルともいえる宇治橋がかかっています。もともとは646年に架けられたという古い橋で、憂いを帯びた周囲の山々の風景とあいまって、その眺めは一幅の絵のようです。

宇治橋のたもとには、1000年の時の流れを見守るように紫式部の像がたたずみ、その対岸には、「宇治十帖」の有名な場面を題材にしたモニュメントも。近年、宇治市は「源氏物語の街」であることを前面に打ち出して、観光PRに力を入れているのです。

宇治・紫式部像

宇治十帖のモニュメントから、石畳の遊歩道「さわらびの道」(『源氏物語』巻48「早蕨(さわらび)」の巻名にちなむ)をしばらく歩くと、世界遺産・宇治上神社の前に出ます。

本殿は平安時代の創建で、現存する日本最古の神社建築といわれています。寝殿造りの拝殿は平安貴族の邸宅を思わせる風情で、御簾の向こうから女官たちの衣擦れの音が聞こえてくるよう……。宇治に行くと必ず立ち寄りたくなる、とても趣のある神社です。