平安時代にタイプスリップしたような気分

4人乗りの唐車となると車体の重さだけでも相当なもの。車を引く牛の負担もさぞや、ということで、長距離を移動するときは、替え牛が用意されていたのだとか。

余談ながら、京都では「葵祭」や「時代祭」などの行事の際に、本物の牛が牛車を引く様子を間近で見ることができます。ギシギシと大きな音を立てながら、京都の街を牛車がゆっくりと進んでゆくさまは、なかなかの迫力。平安時代にタイプスリップしたような気分になります。

京都では祭りの日に本物の牛が牛車を引くさまが見られる(上の写真が葵祭の行列)

牛車に乗るときはうしろから入り、降りるときは前から。前後の入口には御簾がかけられていて、御簾の下からこぼれ出た女性の装束の袖や裾の美しさでも競い合っていました。

『源氏物語』では、賀茂祭(葵祭)の見物場所を巡って、光源氏の正妻・葵の上と恋人である六条御息所の従者のあいだで諍いが起こり、六条御息所の牛車が壊されて、他の場所へ追いやられる「車争い」のエピソードが有名です(巻9「葵」)。名場面の1つとして知られているので、印象に残っている人も多いのではないでしょうか。