詩歌管弦の遊び
さらに、「平安の間」には、寝殿造の貴族の邸宅が一部復元されています。
屏風や几帳、燈台、鏡など、豪華な調度が整えられた部屋で、女官と思われる女性2人が囲碁をしている。そんな姿が、等身大の人形を用いて再現されているのです。
なぜ囲碁を?と思った人もいるかもしれません。
空蝉が碁を打っている様子を光源氏が垣間見る場面など、実は『源氏物語』にも、囲碁がしばしば登場します。このことからもわかるように、平安時代の囲碁は、知的な遊びとして、男女を問わず人気だったのです。
囲碁のほか、漢詩や和歌をつくり、琴(きん)や琵琶、笛などの楽器を演奏する、いわゆる「詩歌管弦の遊び」も盛んに行われていました。
『源氏物語』でも、光源氏をはじめとする登場人物が、祝いの宴などで「管弦の遊び」に興じる場面が度々描かれます。月明りの下、皇族や公卿たちが、得意の楽器を手に合奏を楽しむ……。なんと優雅な光景でしょう。
しかも、それぞれが名人級の腕前で、奏でる音色が家柄や人柄まで物語ったとか。ちなみに、光源氏は琴(七弦琴。演奏が非常に難しく平安中期以降廃れた)の名手という設定です。
『光る君へ』では、まひろが琵琶を奏でるシーンがありましたが、こうした「管弦の遊び」は今後もドラマのなかで折々に登場するのではないでしょうか。
「遊び」には漢詩や和歌をつくることも含まれていますが、現代人の私たちにとっては、ちょっと意外な気もします。平安貴族にとって「遊び」とは、一種のたしなみ、教養の1つだったのでしょう。