紫式部が晩年を過ごした寺

現在の雲林院は小さな寺ですが、平安時代には広大な敷地を誇る有名な寺院で、桜の名所としても知られていました。『源氏物語』には、義母・藤壺に拒まれたことに絶望した光源氏が、出家を考えて、伯父(桐壺更衣の兄)のいる雲林院に籠る、という場面が出てきます。(巻10「賢木」)

墓所のほど近く、紫式部が晩年を過ごした雲林院。『源氏物語』ゆかりの地であることを示す案内版も

『枕草子』にも、賀茂祭(葵祭)を見物するために朝早くから雲林院のあたりに牛車が立ち並ぶさまが描かれています。(残念ながら、現在の葵祭では、行列は雲林院の近くは通りません)

その『枕草子』の作者、清少納言は紫式部のライバルといわれる存在でした。

『光る君へ』ではファーストサマーウイカさんがこの役を演じていますが、タイプの違う才女2人の活躍も、今後のドラマの見どころになるでしょう。

私がお参りしたときは、ちょうどムラサキシキブが艶やかな紫色の実をつけて、静かな墓所に彩りを添えていました。控えめながら、優美な趣のあるこの植物の名も、もちろん、紫式部、その人にちなんでいるようです。