わけのわからないものを無理やり覚えるのは効率が悪い
「その手順はとても簡単である。まず、ものをいくつかの山に分ける。もちろん、量が少ない時には、一山でもよい。次のステップに必要な設備がないためどこか他の場所へ移動する場合を除いては、準備完了である。一度にたくさんし過ぎないことが重要である。多過ぎるより、少な過ぎる方がましだ。すぐにはこのことの大切さがわからないかもしれないが、この注意を守らなければ、面倒なことになりかねない。そうしなければ、高くつくことにもなる。最初はこうした手順が複雑に思えるだろう。しかし、それはすぐに生活の一部になってしまう。近い将来、この作業の必要性がなくなると予言できる人はいないだろう。その手順が終わったら、再び材料をいくつかの山に分けて整理する。そして、それぞれ適切な場所に置く。それらはもう一度使用され、またこのすべてのサイクルが繰り返される。面倒ではあっても、それは生活の一部である」*1。
これは、認知心理学の教科書によく出てくる文章なので、ご存じの方がいるかもしれませんね。
でも、初めてこの文章を読み、これを覚えようとすると、ほぼ不可能に近いのではないでしょうか。わけのわからないものを無理やり覚えようとすると、とても効率が悪くなります。
この文章は、わざと少しわかりにくくした不親切な文章ではありますが、実は洗濯の手順を書いたものなのです。そう言われれば、「あっ、そうか」と腑に落ちるのではないでしょうか。
文章を読んだり話を聞いたりする前に、タイトルや見出しが示されていれば、その話が急に理解しやすいものとなります。これは、知識の枠組みである「スキーマ」を活用することができるからです。
先の文章では、洗濯についてのまとまった知識すなわち「洗濯スキーマ」を私たちが持っているため、これを先に活性化しておくことで、話の内容が理解しやすくなるわけです。その結果、ぐんと覚えやすくなるのです。
ということは、何かを覚えなければならない時には、まず内容を理解するよう努めることが、結局は近道だと言えるでしょう。ジョン・ブランスフォードたちのグループは、一連の実験によって、このことを明らかにしています。