やっぱりピザは美味いぞ
世界中を探しても「ピザ? 俺は苦手だなあ」という人はいないだろう。パリッとした皮の小麦粉の風味、たっぷりのチーズに塩味の効いたベーコンやシーフード、添えられたバジルやトマトも最高だ。
とはいえ、独身住まいにとって宅配ピザは縁遠い。何と言っても一人で食べるものとしては高価なうえに、高カロリー。Mサイズであれば1200カロリー近くあるので、ほぼ一枚で1日分のカロリーを摂取することになる。糖質、脂質もしっかり収まっているので、この食べ物がよく似合うのは食べ盛りの高校生だけかもしれない。
そんな禁断メニューが突如、我が家の食卓に上がった。迷い込んできたピザは4種類のテイストがMサイズに詰まったタイプ。私はケーキ入刀のごとく、包丁で一枚ずつピザをカットしていく。さあ、来るぞ、来るぞと心が躍る。
手元には白いワインを準備して、一枚ピザをかじるとそこには数年ぶりの天国が待っていた。以前「1週間頑張ったごほうびに!」と、一人暮らしの部屋でたっぷりチーズがのったピザを頬張る女性のテレビCMがあったことを思い出す。今ならあの超ハイテンションな気持ちがよく分かる。
続けて、3種類の味を楽しみつつ、食べ進めていく。そしてピザが半分サイズになった頃に気づいたことがある。
「私、……味に飽きた?」
そう、具材で味変したところで、どこまで食べ進んでもチーズはチーズ。そろそろ冷奴や煮物の味が恋しくなる。中年にとってピザ一枚の消費が苦しい理由は、脂っぽさも一理はあるけれど、同じ味を続けて食べることだと初めて気づく。
思い返すと中高年はラーメンや牛丼よりも、小鉢を好む傾向がある。対するように若者はカレー、パスタといった一味で消化するようなものを好む。実家で出てくる料理もやたら品数が多いのは、そのせいなのか。
歳を重ねると色々発見があるものだと、残ったピザを一切れずつラップで包んで、冷凍した。これでまたピザパーティーが開催できる。今度は各所に提出している企画が通過した時に、ごほうびで解凍しよう。