(写真はイメージ。写真提供:photoAC)
世間から「大丈夫?」と思われがちな生涯独身、フリーランス、40代の小林久乃さんが綴る“雑”で“脱力”系のゆるーいエッセイ。「人生、少しでもサボりたい」と常々考える小林さんの体験談の数々は、読んでいるうちに心も気持ちも軽くなるかもしれません。第17回は「宅配ピザは中年のテンションを上げる」です。

ウーバー、配達先を間違える

取材を終えて自宅に戻った瞬間「えええ??」と驚いた。なんと玄関ドアの前に、注文した覚えのない宅配ピザが置かれていたのだ。

とりあえず部屋にピザを招き入れて、ドラマの刑事(デカ)ように考える。まず、このピザは、ウーバーイーツの配達ミスであることは間違いない。コロナ禍から急速に発達したウーバー、何かとトラブルが多いと聞いていたけれど、こんなことあるのか。

そして我が家は完全オートロックのマンション……ということは、同じ棟内のどこかの部屋と間違えている可能性が高い……ただ待て。同じ敷地内には資産家の大家が管理するマンションが3棟もある。何度か別の棟の「小林さん」の宅配荷物が届いたことから推測すると、別の棟に注文者がいる可能性も……と、ビニール袋に包まれたピザと対峙しながら真剣に考えた。

ふと、ピザケースには小林ではない宛先が貼られていることに気づく。「これは小林違いではなさそうだ。ではなぜ我が家に?」とピザを発見してから、ここまで30分近く私の推理は止まらなかった。

推理が40分を超えたところで困っている人のためにこのピザを返却せねばと、やっと我に返り、ピザ屋の店舗へ電話をする。

「あのすみません、我が家にウーバーイーツさんからのピザが間違って届いておりまして」
「あ……そうですか(落胆した声)」
「出かけていたので、何時に届いたかも分からないんですが、これは一体どうしたら……」
「あ、もう召し上がってください」
「え?(そんな簡単にあきらめちゃうの?)」
「ウーバーさん、時々こういうことがあるんです。後のことは我々で調べますので、この度はご迷惑をかけて申し訳ありませんでした」

気になってピザの値段を調べると、Mサイズで3000円近くする代物と判明。私が刑事ぶって思考を巡らせる前に、とっととピザ屋に電話をすれば良かった。おそらく、本来注文した家庭では、空腹論争が起きているだろう。

「お母さん、ピザまだ〜? お腹空いた〜」
「変ねえ、注文してもうだいぶ経つのに」

(勝手に)小学生の男子がきっと泣きそうになっているかもしれない。もしくは独身男性がたまのごほうびにと高カロリーなピザを注文して、コーラを片手にワクワクしながら待っているかもしれない。ああ、申し訳ない。そう思いつつ、リビングに漂うチーズの香りに負けて、突然のピザパーティー開催となった。