京都御所から感じる『源氏物語』の世界

ご存じのように、『源氏物語』の舞台は平安時代の京都です。そして京都には、『源氏物語』に描かれた神社やモデルとなった場所が、往時の面影を残したまま現存する。海外の人にはそのこと自体が驚きではないでしょうか。

その代表例が京都御所です。御所には、天皇の住居と、宮中の儀式が行われる御殿があり、明治維新後、1869年に明治天皇が東京に移られるまで、歴代の天皇が実際にここに住んでいたのです。

『源氏物語』の設定によれば、天皇の皇子である光源氏も、この御所で生まれ育ったことになります。ただし、厳密に言えば、現存する京都御所の建物は、江戸末期の1855 年に造営されたもの。平安様式の建物ではあるものの、建っている場所も平安時代とは異なっています。

なぜなら、平安時代に建てられた宮殿は13 世紀に焼失してしまい、その後、再建されなかったから。現在の京都御所は、天皇が仮住まいをしていた摂関家(皇后の実家など有力な公家)の邸宅のひとつを、戦国時代の武将たちの援助を受けて拡大したものです。それ以降も、御所は焼失と再建を繰り返したため、現存する建物は築170 年程度と比較的新しいわけです。