結婚歴30年の友人の話

(実態はわからないが)漏れ聞こえてくる人たちの話では、男の人と暮らしている人たちは苦労のほうが多そうだ。

「主人との暮らしは大変なことばかりでもないよ、うちは毎日はごはん作らなくても何も言われないし、どこに行ってもなにも言われない、好きにさせてもらってる」

と、結婚歴30年の友人。

「え、待ってください。それがいいところですか?自由にして何も言われない、というところがご主人との暮らしで幸せを感じるところですか。それが一番はじめに出てきますか。参ったな、こりゃ」

「そう?」

「奴隷的発想ですよ!」

「わはは、そんなことないよ。色々、話せたりするし、しみじみといい時もあるよ」

「それはともだちで代替えができますね」

「ごはんをさ、美味しいって食べてくれるとかさ、一緒に食べるとか、作る幸せとかさ」

「男性にごはんを作りたい、ありますね、あります。ですからたまに後輩とかね、友人の息子さんとかね、食べにきてもらえたら、それで代替えができますね」

「でもほら、そりゃあさ。ご主人様というのはさ何よりもほら、身を粉にして何年も働いてくれてるわけだから有り難いよ」

本連載から生まれた青木さんの著書『母』