加賀 それが理想。山本陽子さんは、亡くなる前日に芦田淳さんのブティックにいらしてたって。お洋服買う元気があったのよ。しかも熱海から代官山に。亡くなった日も出かけてて。最高。私にはすがりつく子どもも孫もいないわけだから、人様の手を煩わせず、迷惑かけないで過ごしたい。
内田 まりこさんの名言「1分1秒、過去のこと」。だから、いつも風のように生きている。
加賀 私には、しがみつく過去はない。(笑)
内田 私も、全然ない。(笑)
加賀 作品もそう。人様が褒めてくれても、自分の出た作品は映画館で1回観たらそれっきり。
内田 潔い。(笑)
加賀 媚びない、群れない、含羞を知ってる女たち。(笑)
内田 いいですね。まりこさんは、昨日今日、でき上がったわけではありませんから。
加賀 生まれた時から(笑)。人に頼らない、臆さない。なぜこんなになったかと思って、母に聞いたのね。戦時中だったから、私が生まれてすぐ疎開することになって。母が13歳の姉に、駅で「切符を買うから赤ちゃんと荷物を守ってね」って頼んだの。
姉は本を読むのに夢中で、荷物を丸ごと盗まれた。おむつも入ってたのよ。お陰さまで、私はすごく早くおむつが取れて。その時から自立してた。(笑)
内田 お陰さまですか。さすが。
加賀 ミルクもなくて、お米の研ぎ汁飲んでたんだって。子どもの頃、母も姉も私に興味ないから、かまってもらった記憶がない。いつもひとりで遊んでた。
内田 だからひとりで考えて何でもできちゃうんですね。女優さんがちやほやされて至れり尽くせりだった時代でも、一匹狼のように生きてて。
加賀 可愛げないよね(笑)、ひとりで完結するのも。よくパートナーに言われる。
内田 女の人からすれば憧れです。私はまりこさんが出演した映画『乾いた花』や『月曜日のユカ』などを子どもの頃に観て、かっこいい女優さんだなと思っていました。