「もう、心細いなんてものじゃなかったですね。妻の姿が見えなくなっただけで、不安で不安で」(力さん)

リハビリと散歩で少しずつ機能が回復

明子 夫は、生活の基本的な機能が欠落したようで、着替えなど当たり前にやっていた日常的な動作がうまくできなくなりました。飲み物も、何を飲んだかをすぐ忘れるし、コップをどこに置いたらいいかもわからない。お手洗いに行く途中で、目的を忘れてじーっと考えていたり……。

 もう、心細いなんてものじゃなかったですね。妻の姿が見えなくなっただけで、不安で不安で。こんな感情は味わったことがありません。あぁ、赤ん坊はきっとこんな気持ちなのだろう、と感じて。その状態が3ヵ月ほど続きました。

明子 でも少しずつ元気になって、半年後には車椅子に頼りながらも、ある程度歩けるようになりました。ところが23年6月、また倒れてしまって。

 急に手の力が入らなくなって手すりがつかめず、しゃがんだまま動けなくなったんです。

明子 その姿を見て大急ぎで救急車で病院へ。2度目の脳梗塞でした。早期発見できたおかげで、投薬治療して2週間ほどで退院したんです。

 妻には、いつも助けられています。

明子 介護は、するほうもされるほうも大変ですよね。最初に脳梗塞で倒れたとき、夫は不安と心細さから、熟睡できないようでした。私も臨戦態勢というか、いつどうなるかわからない気持ちでしたから、ゆっくり眠れなくて。

見かねたケアマネジャーの方が、「奥様の休養日も作ったら」と、夫にデイサービスを勧めてくださった。リハビリもしっかりやったほうがいいだろうということで、彼は機能訓練のデイケアに行くようになりました。