とくに高齢期の方は、骨折や病気をきっかけに寝たきりになる場合があります。私も寝ついてしまわないよう、いまもリハビリに励んでいる最中。

明子 最初はしぶしぶだったのよね。

 そうだったかなぁ(笑)。週2回、個別機能訓練と集団機能訓練の両方に取り組んでいます。字を読むのは、個別機能訓練。一度に3つの文章を読み、その内容を話すなどして。集団機能訓練は、体操などの身体的なリハビリ。おかげで、だいぶ歩けるようになりました。

明子 リハビリは身体的な機能の改善に加えて、脳の活性化にも役立っているようです。お仲間の名前も少しずつ覚えて会話もできるようになったからか、前ほどはいやがらないわね。(笑)

 デイケアの日以外も、足腰の衰えを防ぐため、天気がよければ歩行器を使って毎日1時間半ほど散歩します。

明子 私の負担を心配して、上の息子が同居してくれています。夫の散歩も、いまは息子が担当。

 散歩しながら町内の方々にご挨拶をしたり、立ち話をしたり。私は福祉の仕事を始める前から、地域で暮らす人たちがお互い助け合うことが大事と考えていました。評論家の樋口恵子さんと一緒に、介護保険制度を実現させる運動をしたり、最近は、子育て支援にも力を入れてきました。

自分が脳梗塞になっても、まだ、何かお役に立てればという思いは消えません。とくに、散歩中のちょっとしたふれあいであっても、つくづく「人間はすばらしい」と感じていますし、この体で生きていく意味を実感できたことに感謝しています。

明子 ご近所での散歩も、心身のリハビリに役立っているんですね。

<後編につづく

【関連記事】
ロッキード事件の鬼検事・堀田力「そろそろ夫婦の人生を楽しみたいと思っていた矢先に…」脳梗塞のリハビリに川柳を書き留めて
市毛良枝「2度の脳梗塞で車椅子生活になった母の目を見張る回復力。100歳で逝った母は〈楽しいことを諦めない大切さ〉を教えてくれた」
美輪明宏「ヨイトマケの唄」熱唱の映像が公開「《元祖ビジュアル系》として物議をかもしたのは、70年近く前。闘いの連続でバッシングされ、困窮を極めたことも」