ロッキード事件(1976年)を担当するなど、敏腕検事として活躍してきた堀田力さん。57歳で早期退職し、社会福祉活動に尽力してきた。2022年末に脳梗塞で倒れたものの、89歳の現在も地域社会への働きかけを続けている。妻・明子さんと〈第三の人生〉について語り合った(構成:篠藤ゆり 撮影:宮崎貢司)
新聞と川柳が日々の張り合い
力 機能訓練のおかげで、最近は、字もだいぶ読めるようになってきました。
明子 夫は、大きな字は読めるので、毎朝、読みたい新聞記事の見出しに印をつけるんです。それを息子が音読するのが習慣に。ときどき時事ニュースについて、自分の考えを披露してくれることもあります。
日常生活のことは抜け落ちていても、昔の記憶は残っているようです。ロッキード事件や当時の政治、福祉活動に関することは詳細に覚えていて、しっかり話すことができます。
力 ただ、「書く」力はまだまだ。長い文章は書けません。
明子 それで川柳を始めたのよね。息子が大きな活字で書かれた川柳の本を買ってきてくれて。
力 字が大きいものはかろうじて読めるのが、幸いです。意味もわかるようになるにつれて、夢中で読んでいるうちに、自分でも作りたくなって。頭に浮かんだ川柳を、毎日書き留めています。