さて、次は水分補給と休憩。体重計に乗ったところ、サウナに入る前に比べてマイナス200gだったので、500ml入りのミネラルウォーターを半分ほど飲む。その後、スパ内の一角に置かれたガーデンチェア風の椅子に座って休憩。
そろそろ熱さが恋しくなってきたところで、再びサウナへ。今度は顔も、腕や足にも「ピリッ」がない。水風呂も肩まで浸かることができた。体のほてりと水温がちょうどいいバランスになっているのかもしれない。
この後、用事が入っていたため、2回目の水風呂を出たところで終了。着替えを済ませ、外に出て歩き始めてふと気がついた。頭がクリアになって、体もシャンとしている。うん、やはりサウナは体にいい気がする。いや、単に「気のせい」なのだろうか。
サウナと健康との関係を探るべく、サウナを用いた治療法「和温療法」を確立し、多くの人を健康に導いている鄭忠和医師を訪ねることにした。
医療費を削減した自治体も
「私が行っている和温療法は、気持ちよく和む温度である60℃の乾式サウナ室で全身を15分間保温し、深部体温(直腸などで測定できる体の内部の温度)を1~1.2℃上げます。その後、30分間安静にして保温状態を持続させ、最後に発汗した分の水分を補給するというもの。
これを継続することにより、慢性心不全や下肢虚血、さらに慢性疲労症候群、線維筋痛症、シェーグレン症候群といった、治療法が確立されていない難治性の病気に効果をもたらしてきました」
慢性心不全に対する高度先進医療として認定された療法だが、深部体温を上げると、どのような効果が得られるのだろうか。
「和温療法のサウナ室に入ると、副交感神経の活性がみられ、血圧は緩やかに低下。胃腸の活動がよくなり、食欲や便通は改善、睡眠の質が上がります」
このとき最も注目すべきなのは血管拡張による効果なのだという。
「全身の細胞からNO(一酸化窒素)やヒートショック蛋白という物質が発現し、血管が拡張して血液が流れやすくなります。その結果、心臓に負担をかけずに、脳から足先まで全身の血流が促進します」
全身に酸素や栄養が行き渡ることで、さまざまな臓器の機能が改善するという。
「血管拡張効果には、NOを作り出して新たな血管を作る働きも。血管の内側にある血管内皮が作り出すNOは血管機能を向上させ、血管を若々しく保つ働きを持っているのです」
このほか、「発汗もサウナの効能の一つ」と鄭先生。老廃物が排出されるだけでなく、鈍っていた汗腺の働きがよくなり、体温調節機能が改善される。
「一般のサウナ施設では、高温の蒸気を感じられるロウリュや水風呂を一緒に楽しむことができます。皮膚への刺激は交感神経をより活性化させることにつながりますし、その爽快感は精神的にもよい影響があるでしょうね」