信仰を持つことの美点
いまの会社では、厚生年金に入れます。副業OKなので、ライターとしての仕事も続けています。一昨年までは思いも寄らなかった展開ですが、副業と合わせると、年収は800万くらいになりそうです。「余裕で暮らせます」
このまま本採用されたら、60歳定年の後も再雇用で勤め続け、65歳まで働くつもりです。その間、厚生年金を掛けつつ、貯蓄や投資も充実させよう、と明子さんは計算しています。3年以上働けば退職金ももらえるようです。それなら、「やっぱり、老後の家は、なんとかなるんじゃないか、と思うんです」と、明子さんはあっけらかんと話します。神様は見ていてくれる。必ず支えてくれる、だから大丈夫、というのです。
******
明子さんの偉いところは、若い頃から先を読んで、投資と貯蓄を始めたことでしょう。フリーランスは年金があてにならないと、早くに悟って準備したことが幸いしました。金融資産さえあれば、フリーだって、老後も恐くありません。明子さんの目論んだ通り、ギリギリまで賃貸で家賃を払い続け、最後はまとまった資金でどかんと老人ホームに入ればいいのです。
それに、投資は、老後になってすら続けられます。使わない資金は複利で増やしておけば、金融資産はさらに膨らむでしょう。明子さんの生き方は、会社員のように厚生年金がなくても、まとまったボーナスや退職金がもらえなくても、フリーランスでも、少ない元手からでも、計画的にお金を増やせる、という好例です。
ただ、明子さんの強さの背景には信仰があると、モトザワは感じます。ふつう、人は迷います。こうしたら大丈夫と計画しても、途中で誘惑に負けたりして頓挫します。そうならずに、精神的に安定して、自分を信じていられるのは、信仰のおかげでしょう。日本人で信仰を持つ人は多くありませんし、うさんくさいエセ宗教も世の中にはあふれています。でも、明子さんを見ていると、信仰を持つことの美点を感じます。彼女の強さ、潔さ、まっすぐさは、神様を信じているからこそでしょうから。
◾️本連載をまとめた書籍『『老後の家がありません』(著:元沢賀南子/中央公論新社)』が発売中