「診断がついたことで気持ちが晴れたと言うか、なるほどと納得して肩の荷が下りた気がしましたね」と語るリトさんは、ADHDの強みを活かして《葉っぱ切り絵》の道へ(撮影:小山志麻)

ADHDと診断されて肩の荷が下りた

じつはリトさん、美大出身でもなければ絵を学んだ経験もない。大学卒業後は飲食業界でサラリーマンとして働いていた。転機が訪れたのは2018年のこと。ほかの人ができることがうまくできない自分に疑問を感じて検査を受けたところ、発達障害の一種であるADHD(注意欠陥・多動性障害)と診断されたのだ。

「大学を出て就職し、3つめの会社に転職した頃でした。前の2社でも失敗して怒られることが多く、なぜ自分はほかの人みたいにできないんだろうとずっと悩んでいたんです。たとえば『明日の仕込みをして』と言われたらそれだけに没頭してしまい、周囲が一切見えなくなる。複数の作業を並行してできないんですね。

気になって、ネットを見ていたあるとき、ADHDのチェックリストをやってみると、ほぼ全部当てはまる。ちゃんと病院に行って検査を受けたところ、正式にADHDと診断されました」

子どもの頃から、靴ひもが結べない、計画的な勉強が苦手で授業中ぼんやりしてしまう、好きなものに過集中するなどの特性はあったものの、学校生活で困ったことはなかった。それだけに家族は、診断結果に対して半信半疑だったという。

「『障がいだなんて大げさな』と言われたときは、なんで伝わらないんだろうとガッカリしました。いま思えば、親としては受け入れられない部分もあったのだろうと思います。ただ、僕自身は診断がついたことで気持ちが晴れたと言うか、なるほどと納得して肩の荷が下りた気がしましたね」

「小さい秋、君も探しに来たの?」