イラスト:木村桂子
離婚や死別などで夫と離れ、再び独身生活に戻った女性たち。別れの悲しみや切なさを乗り越えて、彼女たちが辿り着いたのは、人生の次なるステージだった。保険外交員としてバリバリ働く瑞穂さん(仮名)は、飲酒、DV、浮気を繰り返す夫に見切りをつけてー(取材・文=丸山あかね イラスト=木村桂子)

髪を掴んで引きずり回されて

保険外交員として働く河崎瑞穂さん(51歳)は、爽やかな印象とはかけ離れた、壮絶な過去の持ち主だった。

「高校卒業後に、大手企業に勤める5歳年上の男性と知り合いました。老舗旅館の御曹司だと知って、交際を申し込まれたときは思わずガッツポーズ。男友達と夜遊びしていた『ヤンキー』の過去は封印し、22歳のときに結婚したのです」

ところが、幸せな結婚生活は3年ほどで終了。同期の中で自分だけが出世できないと落ち込んだ夫が、酒に溺れるようになってしまったのだ。「俺は仕事で下げたくもない頭を下げているのに、お前は呑気でいいな」などと絡まれる辛い毎日が始まった。

「出産したばかりだったこともあり、じっと耐えていたのですが、息子が小学3年生になった頃に夫の浮気が発覚。それからは、顔を合わせれば言い争いばかりで、私も夜な夜な飲み歩くように。数年後、中学生になった息子が万引きをしたとスーパーから連絡を受けて目が覚めたものの、時すでに遅し、で」

息子は教師への反抗や喫煙など問題を起こし続けた。瑞穂さんは、謝罪に持参する菓子折りを家にストックしていたという。やがて学校から「両親と面談したい」と申し出があり、初めて夫の知るところとなった。

「家に帰ると夫は『恥をかかされた!』と息子を殴りつけ、私も『お前が甘やかすからだ』と髪を掴んで引きずり回されました。さすがに堪忍袋の緒が切れて、即座に離婚を切り出したのです。慰謝料も養育費も払わないと宣言されましたが、上等じゃないの、と言い返し、息子と一緒に家を出ました」