華やかな大先輩

渡辺先生は、もっとも後輩の面倒をよく見た作家かもしれません。文学賞の贈賞式など、公の席にはいつも出席されて、若い作家とも親しくしてくださいました。とても華やかで、作家としての振る舞いの手本となってくれる人でした。

当時は文藝春秋主催の「先輩作家と後輩作家による講演会旅行」というものがありました。この企画で一度、渡辺先生と、長崎にご一緒させていただいたんです。これは若手作家にとって非常に意義深いことで、学ぶことの多い文化事業でありました。とても楽しい思い出ですが、旅の最中に渡辺先生は、なぜかずっと電話をしていました(笑)。果たしてどこに、誰に電話をかけていたのか。正直な方ではありましたが、謎の多い方であったことも間違いありません。

 

愛用は三菱のハイユニ(2B)とトンボの消しゴム(提供◎渡邉家)