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今さら離婚はできない。かといって四六時中一緒の生活は窮屈すぎる。悪戦苦闘の末、快適な距離を見いだした夫婦の暮らしとは。郁代さん(仮名)は夫の定年で、生活が一変してしまいーー(取材・文=上田恵子)

能天気な一言で、ウップンが爆発!

夫の定年退職を機に、長年の不満が爆発してしまった郁代さん(58歳)のようなケースもある。

「実は私、もともと家事が大嫌いなんです。特に料理。でも結婚するとき、教師の仕事を辞めて家庭に入ることが姑からの条件でした。東京郊外にある旧家だったので、広い自宅の掃除をするだけでも重労働。結婚生活は毎日が修業みたいでしたね」

広告関係の仕事をしていた夫は、毎晩のように飲み歩いて午前様。土日もゴルフだ釣りだと家を空けることが多く、息子2人の子育てはもちろん、10年にもおよぶ姑の在宅介護にも、一切手を貸してくれることはなかったという。

「その後、息子たちも無事に就職し、家を出てくれて。やっと自由な時間ができたから、以前から興味のあったカルチャースクールに通ったり、友達とランチをしたりして、自由を満喫していたのです」

ところが、3年前に夫が定年を迎えた途端、状況は一変。健康ブームに乗った夫が、「朝は有機野菜を使ったジュースを作れ」「肉は○○産を使え」など、食事の内容について細かく指示し始めたのだ。

「現役時代はさんざん好き勝手していたくせして、何が有機野菜ですか。しかも『野菜は買うと高いから、家庭菜園でも始めたらどうだ。いい暇つぶしになるだろう?』ですって。その能天気な一言で、たまりにたまったウップンが爆発しました」

妻が夫の存在をストレスに感じる度合いは、定年後、半年から1年のあたりでもっとも高くなるというデータがあるが、良子さんも郁代さんも、まさにこのパターンに当てはまっている。