いただき乱用のメール

電話で連絡を控えるのなら、一般的にはメールで用件を伝えることになる。ただ昨今、メール嫌いと同じように、メールの文面がやたら丁寧な面々が増殖している。

「平素は大変お世話になっております」から始まり、長々のお礼文章に続き、1通のメールに対して乱発使用される「~いただきます」。その他「~幸いでございます」「幸甚に存じます」「~いらっしゃいますでしょうか」。そして締めは「今後とも宜しくお願い申し上げます」。

20年以上、出版業界に携わっている人間なのでそれなり読書もしているし、読解力は身についたほうだと自負している。そんな私でさえも「ええと、ご用件は?」と何度もメール文章を読み直す羽目になる。で、結局肝心な納期などが書かれておらず、また質問メールを返信。で、さらに返ってくる上記のような、尊敬語、謙譲語、丁寧語がミックスされた長文を読むことになる。

これが20代の若手に限った話ではなく、中高年の会社員にも顕著に見られる現象だ。送信者は、私のようなせっかちでガサツなタイプではなく、おそらく真面目で丁寧な人物。決して悪い人ではない。そう思えるのは数年前に不動産屋からメールを、いまだに忘れていないから。

長野県を旅行している時に現れた「いなあいネット」(写真提供◎著者、小林久乃さん)
数年前、長野県を旅行している時に現れた「いなあいネット」。どこにつながるのか