エンパワメントは現代人が歓迎する考え方

第26回には崔が、廃止が決まっていた明律大女子部の存続を学長に土下座までして頼んだ。さらに勉強会の世話役的存在を務めた。これもエンパワメント。本人は高等試験を受けずに帰国することを決めていたが、寅子たちがなるべく勉強しやすいよう環境づくりに励んだ。

結婚の効果か、ついに依頼人に指名された寅子。初めて法廷へ

 

崔は仲間たちに帰国を告げたあと、涙ながらにこう言った。第28回だった。

「みんなは次こそ必ず受かるって。そう信じているから」「最後まで一緒にいられなくてごめんなさい」

そんな崔が6年間の留学生活を送れたのも国籍の違いを超えて梅子らがやさしくしてくれたからである。

エンパワメントには命令も競争も存在しない。個人の弱点を周囲が指摘したり、補おうとしたりすることもない。周囲は個人の潜在能力を最大限に引き出すように努める。

寅子たちも成績を競い合うようなことは1度もなかった。勉強の無理強いも足の引っ張り合いも一切していない。だから寅子たちの学習風景は観ていて清々しかった。寅子が高等試験合格前の第27回から勤務する雲野法律事務所にも命令や競争は見当たらない。

エンパワメントは現代人が歓迎する考え方ではないか。命令や競争は日本の伝統的システムだが、それによって得られる仕事や学業の成果には限界があることが分かってきた。命令や競争は軋轢を生みかねず、ひいてはパワーハラスメントに発展しかねない。