プロデュースする側に自分が回ってみて
今年2月には、『滑走屋』というアイスショーをプロデュースする機会もいただきました。競技スケートの面白味は、ピリピリとした雰囲気の中で、スケーターは練習してきたものを披露し採点され、お客様はドキドキハラハラしながら観戦することにあります。
一方で、アイスショーが見せるべきは《世界観》。試合に失敗はつきものですが、アイスショーに失敗は禁物です。だから、難易度を落としても、常に安定したいいパフォーマンスを見せていく必要がある。お客様にご覧いただくスケートのスタンスが全然異なります。
僕はミュージカルや舞台を観ることが大好き。世界に入り込み、すっぽり包まれるあの感覚は何物にも代えがたい。アイスショーでは、出演メンバーをどうつないでいくか、どんな流れを作れば観客を引き込んでいくことができるのかに思いを巡らせます。自分ならこういうものを観たいという感覚が頼りですね。
プロデュースする側に自分が回ってみて、新たに見えてくることもありました。プロデューサーの仕事は多岐にわたります。メンバーのスケジューリングから始まって、ホテルや食事の手配、PRの仕掛け方など、同時進行でさまざまな決断をしなければなりません。
みんなそれぞれがいいものを作りたいと思っているのだけれど、どうしても立場的に意見が対立してしまうことがある。その押し引きのバトルに折り合いをつけていくのも僕の役割でした。こういう仕事は絶対に苦手だと思っていましたが、意外にも嫌じゃなかったようです。
何かを生み出すためにぶつかり合うことは大変だったけれど、そのぶんやりがいもありました。大変と言いながら楽しそうですか? 確かに僕にとって「大変」というのは、ポジティブな言葉かもしれませんね。