「それは女性ばかりが困っているよね」は
永田町でも一緒だった
私が今回この題材に向かったのは、性差別について正面から書くためでした。2023年度ジェンダーギャップ指数125位と過去最低を更新した日本で、経済的に豊かで、社会的地位のある女性も差別に直面したことがあるのではないか。日本で一番ハイキャリアな女性は誰か?と考え、国会議員を主人公のひとりにしました。
けれど取材中は、「女性ということで不利益を受けたことはありますか?」という質問は一切しませんでした。それは単純に、その人はどういう人か、何が大変で、どんな時、うれしいと思うのかなど、「その人自身を知りたい」ということが取材の目的だったからです。さらに女性議員を前に、女性ならではの話を聞こうというのも何か違う気がしたからです。
けれど女性差別に関するエピソードは、女性議員の方々のお話のなかで自然と出てきました。男性有権者からの嫌がらせ、出産、育児と選挙の時期がぶつかると、どうすればいいのかわからない、ということをはじめ、「それは実際、女性ばかりが困っているよね」というエピソードがたくさんあって。そしてそのひとつひとつが、「これは政治家だけに限らない」ということばかりでした。
議員さんたちは遠い存在だと思っていたけれど、私も、弁護士や企業法務の仕事、そして作家として働いてきたなか、同じようなことで悩んできました。読者さんもきっとそう思われるだろうなと思ったとき、「この小説は書ける!」と確信しました。