男性の装束にも「かさね色目」が

シーンに応じて、狩衣、直衣、束帯と着替えるなど、『光る君へ』では、女性の登場人物よりも、男性のほうが衣装のバリエーションが断然多いのも、興味深い点です。また、官職が上がると、装束もどんどん豪奢になっていくのです。

黄褐色の黄櫨染(こうろぜん)は「天皇だけが身につけることができる」といったように、当時は、装束に用いる色や文様それぞれに、決まりや意味があったそうです。そんな制約のなかで、自分の美的センスや教養を発揮して、互いに競うように着飾っていた。表地と裏地で「かさね色目」を楽しむなど、男性の装束もとてもおしゃれだったのです。

例えば、このドラマで安倍晴明が着ていた狩衣は、右袖と左袖で色が異なる斬新なデザインでした。そういうところにも着目すると、ドラマがもっと楽しめるのではないでしょうか。

有職故実の専門家が見ると、やや首をかしげてしまうような衣装もあるようですが、当時の文化・風俗の雰囲気を再現していることは確か。細かいことはあまり考えず、平安絵巻の世界を堪能しましょう。

「腰輿(およよ)」と呼ばれる輿に乗った葵祭・斎王代の一行。男性は狩衣を着ている(撮影◎筆者)