安産祈願のため女房装束も白一色に
山科流では、布地の色にかかわらず、白糸で縫うのが決まり。一寸三針なので、通常の和装の仕立てと比べると縫い目がかなり大きいのですが、このほうが装束の風合いが出るのだそうです。
婚礼用に使われることも多いため、向蝶丸紋(二匹の蝶が向かい合った姿を表す吉祥文様)や雲鶴丸紋(たなびく雲の中、つがいの鶴が向かい合って飛ぶさまを表す)など、文様や配色にもおめでたいものを選んでいるとのこと。
また、白の女房装束を現代的にアレンジした「平安調白無垢」も考案。格調高い婚礼衣装として提供しています。
というのも、平安時代の宮中では、出産が近づくと、吉日を選び、産室の室礼も女房たちの装束もすべて白一色に変えて安産を祈願したというのです。『紫式部日記』に、中宮・彰子のこうした出産準備が記されているほか、『源氏物語』の巻34「若菜・上」にも、明石の女御が東宮の皇子を出産する場面で、同じような描写が出てきます。
このことに着想を得て、真っ白な唐衣や裳に、金銀の鳳凰や大粒の真珠などをあしらった、きらびやかで品格のある十二単が生まれたのです。