娘の私は父ほど頂き物を苦にする性格ではない。みかんもリンゴもお菓子も漬け物も、おいしいものをいただくのは大好きだ。送ってくださった方に心から感謝の念を抱く。ただ、残念なことに、その感謝の気持を当意即妙に表す能力に欠けている。

今、私の前に、絵葉書の山が積まれている。積んだのは私だ。書きやすいペンの用意もできている。

父のように、この姿を亭主や秘書アヤヤに見守ってもらいたいなどと、そんな甘ったれたことは望んでいない。望んでも誰も来てくれないし。そして、おもむろに絵葉書の山に手を伸ばす。さて、どの絵葉書でどなたに出そうかしら……。

昔から旅先で絵葉書を買うのが好きである。美術館や神社仏閣で買った絵葉書をたくさんため込んでいる。

どうやら母にも同じ趣味があったらしく、両親亡きあと実家の整理をした折、未使用の絵葉書が大量に出てきた。もったいないからすべて持ち帰った。未使用にもかかわらず、四十年五十年もののビンテージ絵葉書も多くある。

ハワイのビーチやスペインのフラメンコダンサーの絵葉書、岡山県の大原美術館で買った絵画の絵葉書、ニューヨークで見つけたポップな赤ちゃんの絵葉書、猫の絵葉書、山本容子さんの銅版画カレンダーを切ってつくった絵葉書……。