阿川佐和子さんが『婦人公論』で好評連載中のエッセイ「見上げれば三日月」。去年の暮れ、お中元のお礼状が書けないまま年末がきてしまい、年が明け今度は各所から年賀状が届き、返礼すべきところが倍増したんだそうで――。
※本記事は『婦人公論』2024年4月号に掲載されたものです
※本記事は『婦人公論』2024年4月号に掲載されたものです
書かねばならぬお礼状がたまっている。
いつからたまったかというと、だいぶ前から。去年の暮れよりさらに前、お中元のお礼もきちんとしないうちに年末が訪れた。まずいまずい。そう思っていたら年が明け、今度は各所から年賀状が届いた。
返礼すべきところが倍加した。
以前に比べて年賀状は減った。メールで届く新年のご挨拶が増えたせいだと思われる。
メールのご挨拶に対しては、まあまあ迅速に対応できる。手書きの年賀状を書くよりは手軽だ。とはいえ、すべてのやりとりをメールで済ませようという気にはならない。
アナログ世代特有の戸惑いとでも申しましょうか、丁寧な手書きの年賀状をくださった方には、手書きの返信をするべきだと、心の中で思っている。思うだけは、思っている。