「日常の関係は舞台には持ち込まないようにしているので、父と同じ舞台に立つからといって、ヤマトタケルの役作りとは結びつけてはいません」(撮影:岡本隆史)
歌舞伎界に新風を巻き起こした祖父と、ドラマや映画の世界で長年活躍する父を持つ20歳の歌舞伎役者、市川團子さん。澤瀉屋(おもだかや)を牽引する《期待の新星》として、今、大きな注目を集めている。2024年は澤瀉屋にとって重要な「スーパー歌舞伎」の原点である作品に主演し、話題を呼んでいる。(構成:篠藤ゆり 撮影:岡本隆史)

<前編よりつづく

疾走感の中で日々が過ぎていく

それにしても、今まで経験したことのない台詞量です。3幕の間、ほぼずっと出させていただいていて、幕が開いたら最後まで走り続けている感じです。

今でも、ヤマトタケル役を演じさせていただいているという実感が湧かないくらい、ものすごい疾走感のなかで日々が過ぎていきます。

2月の公演ではダブルキャストの中村隼人さんに本当に助けていただきました。「ここ、こうなんじゃない?」とさまざまにアドバイスしていただいたり、とにかくたくさん話しかけてくださって、メンタル面も心から気にかけてくださいました。

そしてこれはあってはいけないことですが、2月に私が体調不良で休演させていただいた時に、私の分まですべてお舞台をつとめてくださいました。とてもありがたく、ただただ感謝の気持ちでいっぱいです。隼人さんの出演は2月25日まででしたので、その日はとても寂しかったです。

帝役は父がつとめています。どの作品でもそうですが、日常の関係は舞台には持ち込まないようにしているので、父と同じ舞台に立つからといって、ヤマトタケルの役作りとは結びつけてはいません。