「ヤマトタケル役のお話をいただいた時は、一瞬、信じられなかったというか――。〈えぇっ? あのお役を僕が!?〉という感じでした」(撮影:岡本隆史)
歌舞伎界に新風を巻き起こした祖父と、ドラマや映画の世界で長年活躍する父を持つ20歳の歌舞伎役者、市川團子さん。澤瀉屋(おもだかや)を牽引する《期待の新星》として、今、大きな注目を集めている。2024年は澤瀉屋にとって重要な「スーパー歌舞伎」の原点である作品に主演し、話題を呼んでいる。(構成:篠藤ゆり 撮影:岡本隆史)

初主演を踏んだ舞台で主役を演じることに

2024年1月、20歳になりました。20代を迎えて初めての舞台は、スーパー歌舞伎の『ヤマトタケル』。昨年9月に他界した祖父(二世市川猿翁)が、「スーパー歌舞伎」の第1作として1986年に発表した作品です。

ビデオテープに残された祖父の『ヤマトタケル』を初めて見たのは、僕が小学校低学年の頃。カッコいいと思ってワクワクしましたし、最後の宙乗りのシーンが忘れられなくて。以来、永遠の憧れというか、夢のようなイメージを抱いてきました。

ですからヤマトタケル役のお話をいただいた時は、一瞬、信じられなかったというか――。「えぇっ? あのお役を僕が!?」という感じでした。

8歳の時に初舞台で出演させていただいたお役が、ヤマトタケルの息子・ワカタケル役だったのですが、その時はまさか自分がヤマトタケル役を演じさせていただけるとは、思ってもいませんでした。