「僕は20歳で、ヤマトタケルの等身大に近い年齢なので、そのことがこのお役に何かよい意味を付与できたらよいな、と。ですから今は、存分に動けるだけ動こうと思います」

祖父の力に改めて圧倒されて

祖父が『ヤマトタケル』を創ったのは、46歳の時です。哲学者である梅原猛先生の書き下ろし作品で、ものすごい熱量で取り組んだのだと思います。

自分がヤマトタケル役を演じさせていただき、この作品のすごさを実感しました。朝倉摂先生の舞台装置や毛利臣男(とみお)先生デザインの衣裳など、今も初演時のものを踏襲していますが、40年近く経っても、古びるどころかますます新鮮に感じるのです。

音楽には、通常の歌舞伎の下座音楽に使われる三味線などのほか、モンゴルの馬頭琴(ばとうきん)や韓国の伽耶琴(カヤグム)なども取り入れられています。

録音した音楽を、まるで生演奏のようにピタッと動きに合わせるためには、緻密な計算が必要です。それを作り上げるだけでも、本当に大変だったと思います。

そして、物語はいい意味でわかりやすいというか――父と息子の確執、兄弟の葛藤、恋人との情、いかに生きるかなど、人生のすべてが込められている。また、熊襲(くまそ)や蝦夷(えぞ)との戦いを通して、侵略する側とされる側の思いも描かれており、現代に通じる普遍的な作品だと思います。

演出もドラマチックで、祖父のモットーだった3つのS――ストーリー、スペクタクル、スピードがまさに具現化されている。初めて歌舞伎を見る方も、すーっと入っていけるのではないでしょうか。