「死」について考えるのはポジティブなこと
第1弾となった作品でお声がけいただいた時、私は「お終活」という言葉を聞いてもピンときませんでした。言葉は知っていましたが、具体的に何を意味するのかわかっていなかったというか、そもそも死ぬときのことを考えるなんて縁起でもないと避けていた節があったのです。
それだけに台本を読んで驚きました。「どういう最期を迎えるのか?」「死ぬのにあたってどんな準備をしておくべきなのか?」といったシビアなことを、こんなふうにユーモア仕立てにするのもアリなのかと。物語のコミカルな展開にゲラゲラ笑い、時に切ないエピソードに涙しながら、気づけば実用的な知識を得ている。こういう作品はこれまでになかったなと。
今回の役を演じるにあたり、撮影現場としてもご協力いただいた名古屋の一柳葬具總本店さんで実際に1級葬祭ディレクターをしておられる方からレクチャーを受けました。そこで感じたのは、葬祭ディレクターは人の心に寄り添う存在なのだということです。
現実的には死なない人は1人もいない。いつか自分も100パーセント死を迎えるのだと再認識できた。「死」をみつめれば、自ずと今をどう生きるかという課題が浮かんできます。死について考えることは、余生を心豊かに生きること…ポジティブな行為なのだと価値観ががらっと変わったのです。
同時に、映画を観てくださる方にこのことを伝えるのが私の役割、自分ならどういう葬祭ディレクターに信頼を寄せ、安心感や安定感といった好感を抱くだろう? と考えながら役作りをしていきました。