悔いないように生きていきたい

(c) 2024年「お終活 再春!」製作委員会

本作では夫婦問題、親子問題、認知症問題、介護問題などを取り上げていますが、その背景に人生100年時代をどう生きるか? というテーマがあります。たとえば定年退職後、家にずっといる旦那さんとの心の距離は離れていくばかりで、これから30年も一緒に暮らすの? といった問題。私は結婚したことがないので、夫婦の関係性の変化はよくわからないというのが正直なところなのですが、長く連れ添っていたらいろいろあるでしょうね、とは思います。(笑)

映画の中では千賀子さんが「もーいや、こんな愛想もない威張りん坊な旦那といられないわ!」と反乱を起こすのですが、大変だなと思う反面、大原夫妻のようにポンポン言いたいことを言い合えるのは羨ましいな、凄い信頼関係で結ばれているんだなとも感じます。といって1人で生きることを寂しく感じるのも違う。どの道、みんな最後は1人になるのだからと思う気持ちもあります。

つまり、この映画を観て何を感じ、何を考えるのかは人それぞれなのだろうなと思うのです。大原家に巻き起こる騒動を笑いながら見ているうち、客観的に自分たち夫婦や家族の関係性をみつめて楽になる方がいるかもしれない。あるいは1人で生きることを選んだ自分にはどんなお終活が必要なのだろう? と考える人もいるかもしれません。いずれにしても自分の人生なのですから、自由に生きていきたい。少なくとも私自身はそうした勇気をもらいました。

見どころ満載の作品ですが、中でも、高畑さん演じる千賀子さんがステージで『愛の讃歌』を歌うシーンが素晴らしいのです。私は高畑さんの歌声に鳥肌が立つほどの感動を覚え、一度きりの人生を悔いのないように生きたいと心の底から思いました。

具体的に何をしたいか? と訊かれたら、ゴルフを再開したいとかダンスを続けていきたいとか、それなりにいろいろあるのですが、何をするかという以前に、どんな心持ちで生きるのかが重要だという気がします。失敗を恐れずやりたいことにチャレンジする、思うようにいかないことが起きても腐らない、辛いことではなく楽しいことに着目する……。作品を通して千賀子さんが教えてくれたことです。