「女性には2通りしかない」

しかし、非現実的な人たちとは言えない。不妊も身近な問題。ストーリーも起伏に富んでいる。だから、目が離せなくなる。

悠子の場合、女性には2通りしかないと信じている。子供を産んだ人と産んだことのない人だ。そんな考えもあってか、基との不倫中に「結婚は絶対に求めません。だから子供を下さい」(第3回)と懇願した。当時、妻だったカナのことは思い見なかった。

また、基の言い出したこととはいえ、理紀に代理出産を依頼しながら、「お願い、自分を大切にして」(同)と翻意を促す。これには理紀も「おかしいじゃないですか」と言い返した。悠子は代理出産そのものを本当は望んでいない。それでも基との関係の悪化を恐れ、面と向かっては反対しない。産まれてくる子供のことを考えている様子はない。やはり共感しにくい。

主人公から周辺の人物まで共感しにくいドラマは極めて珍しい。しかし、それでも構わないのだ。最近のドラマは共感を集めようとする作品が多すぎる。

全米で大ヒットしたドラマ『プリティ・リトル・ライアーズ』(2010~17年、ABCファミリー)や同『オレンジ・イズ・ニュー・ブラック』(2013~19年、Netflix)も数多い登場人物の全員に共感しにくい。それぞれが非情な面や傲慢な面などを持つからだ。その分、物語全体にリアリティがある。誰でも一長一短あるのだから。『燕は戻ってこない』も同じだ。

(『燕は戻ってこない』/写真提供:NHK)