姉に全てを打ち明けて
私が、エッと思う間もなく、夫は仕事に出かけていった。玄関に残された私は信じられないほどの衝撃を受けた。夫は、私が仮病を使っていると思っていたのか……。私をそんな人間だと思っていたのか……。
その後、1時間ほどぼーっとしていただろうか。そして気づいた。夕方には夫が帰ってくる。そのとき、嫌だと強く思った。あの男と同じ空気を吸う空間にいたくない。とりあえず、静岡にいる姉のところに泊めてもらおう。体調はすぐれなかったが、なぜかこのときの私は行動が素早かった。
まず、姉の職場に電話をかけた。急な頼みごとで驚かせてしまったが、その日の夜に泊めてもらう約束を取りつけた。次にスーパーに行き、夫の夕食用の弁当を買ってきた。身支度を済ませ、夫に置き手紙を書いて部屋を出る。私鉄と新幹線を乗り継いで姉のもとへ向かった。新幹線の窓の外には細かな雨。菜種梅雨だった。
その晩、姉の家に落ち着くと当然ながら事情を聞かれ、そのとき初めてそれまでの結婚生活の実態を打ち明けた。姉夫婦は驚きながらも、私の話を最後まで聞いてくれた。そしてすべて話し終わると、2人してこう言った。「あんた、もう大阪に帰らなくていいから。別れていいから」。