私が子供の頃、その人形たちはもう少しマシな様子だったと思うけれど、出し入れを繰り返し、引っ越しのために移動させ、しだいに傷がついていったようだ。
無理もない。母がいくつのときにそのひな人形を手に入れたのかは知らないが、幼い頃と推測すれば、もはや九十年以上の古物という計算になる。
以前は人形を飾るための漆の飾り台や赤い毛氈もあった気がするが、いつのまにか紛失した。残っている平飾り台は脚付きのお内裏様用のものが一つだけ。
しかたがないので黒塗りのお重を上下ひっくり返して置き、その上にお重よりやや小さい漆っぽい厚手の黒い板(はて、なんの飾り台だったか覚えがない)を、さらにお内裏様用平飾り台を乗せ、なんとか三段にしつらえる。
当座しのぎの寄せ集め三段飾りではあるけれど、それなりに格好がついた。