言語のスイッチ

その後、日本語をしゃべらないイタリア人と結婚し、今もイタリアと日本をたびたび往復していることもあり、イタリア語は私にとってほぼ母国語に近いものになっている。どちらかの言語をどちらかに翻訳しながら話したり聞いたりしているわけではなく、環境によって自動的に言語のスイッチが切り替わるのだ。

だから、日本語では表現できてもイタリア語ではなかなか正確に言い表せない言葉や、イタリア語でなければ伝えられないような言葉もたくさんある。とくに悪口がそうだ。

日本を去った17歳の私は、正直日本語が未熟だったし、人生経験も浅かったので、誰かに何かを訴えたり、口論をしたり、自己主張をしたりといった、生き延びるのに必要な強い言語表現はすべてイタリアへ行ってから習得した。