泊まりがけで実家を片付け

そんな早紀さんの喫緊の課題は、実家の売却です。早紀さんが海外にいた頃は元気だった両親は、数年前、早紀さんが帰国した後に、立て続けに80代で亡くなりました。実家は本家ですが、住む人もなく、いま空き家になっています。同じ県内でもかなり田舎のほうで、立地はあまりよくありません。不動産業者に見積もりを取ったところ、驚くほど安い金額でした。それでも買い手がつくうちに、早く売ったほうがいい、と言われました。そのためにも、早紀さんは時々、実家を片付けに通っています。

とはいえ、早紀さんの住まいから実家までは、電車を乗り継いで片道3時間半もかかります。早紀さんは車が運転できないので、日帰りは無理です。数ヵ月に一度、仕事を調整して連休にして、泊まりがけで行きます。

先日も、実家に行って、掃除をしてきました。3泊4日。着いたらまず、ご近所に不在を詫びて、ご挨拶。檀家になっている菩提寺にも挨拶します。和尚には、母が存命の頃までは、毎月命日にお経を上げに来て貰っていました。その都度、読経代とお車代を包んでいました。お寺の経営も大変だと聞かされましたが、早紀さんのほうも本当にお金がありません。母の死後は和尚に説明して納得してもらい、月命日の法要はパスするように。お布施もいまや最低限で了承して貰っています。

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実家に残されたままの家財道具は、早紀さんが少しずつ捨てています。洋服はすでに処分しましたが、まだ大量に着物が残っています。戦前生まれだった母は、昔の人ゆえ、けっこう高額な着物もたくさん持っていました。「しつけ糸がついたままの着物まであるんです!」袖を通してすらいないとは、よほど大切にしていたのでしょう。でも、売ると二束三文にしかなりません。早紀さんは人にあげるか、自分が着るか、しようと思っています。

早紀さんの私物や、アロマテラピー関連の資料なども、倉庫代わりに実家に置いてあります。いずれ、友だちに車を出してもらって、荷物を引き取りに行くつもりです。他にも、昔のおもちゃなど、マニアに売れそうな物もあります。「メルカリなんかで、売れば売れるんでしょうけど。それも面倒で」。不動産が売却できたら、最後は業者にまるごと処分を任せるつもりです。