オスカーの不思議な力
ドーサ氏が勤めるプロビデンスの認知症患者ホーム「スティアーハウス」では、早い段階から動物を採り入れていました。
皆が集うリビングでは鳥かごの中で小鳥が鳴き、本が書かれた2010年当時には合計6匹の猫がいました。
ことの始まりは、ホームの建設中にたまたまやってきた野良猫が、完成しても出ていこうとしなかったこと。
このヘンリーが最初の猫になりました。
ヘンリーが亡くなるとホームが空っぽになったように感じられたので、その穴を埋めるために6匹の猫を引き取り、その中の1匹がオスカーでした。
オスカーは甘え上手なタイプではなく、どちらかというと不機嫌な猫。
しかし患者が死に瀕していると、普段なら内気なオスカーがドアの前に立ち、かりかり引っかいて「中に入れてほしい」と頼むのです。
ベッドの足元のほうに跳び上がり、寝そべります。
ゴロゴロのどを鳴らし、患者が息を引き取ると部屋から出て、お気に入りの場所であるメアリーの部屋に帰ります。
「患者の死期が近づいたことに最初に気づいたのがオスカーだったということもあります。これまで100人以上の死に寄り添ってきました」と、ドーサは言います。
猫が死を招いているのではという憶測もありましたが、すぐに否定されました。
このホームの患者は全員歳を取っていて重い病気を患っています。
あと数日、数週間、数カ月の命なのです。
オスカーはその中でもあと数時間しか残っていない人の元へ行きました。
ドーサら専門家は、猫がどのように死を予知するのかを調べようとしました。
発せられる匂いに猫が反応するという仮説もありますが、猫にはやはり第六感があるのかもしれません。
※本稿は、『にゃんこパワー:科学が教えてくれる猫の癒しの秘密』(新潮社)の一部を再編集したものです。
『にゃんこパワー:科学が教えてくれる猫の癒しの秘密』(著:カリーナ・ヌンシュテッド、ウルリカ・ノールベリ 翻訳:久山葉子/新潮社)
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