痛ましい事件は後を断たない

――しかし杉本さんが動物の福祉向上のため奮闘することを他所に、痛ましい事件は後を断つことがありませんでした。2017年には元税理士の男性による猟奇的な虐待事件が発生します。

虐待目的で猫を捕獲機で捕獲して、下からバーナーで炙って大やけどを負わせたあと、ぐらぐらに煮立った熱湯を上から何度も浴びせ、それをインターネット上の匿名掲示板に投稿、さらに第三者が煽りたてるという世間を震撼させた事件で、当時の報道でも大きく取り上げられました。

当時の「動物愛護管理法」では犬や猫などの「殺傷罪」は2年以下の懲役又は200万円以下の罰金と定められていました。判決後、当時の動愛法の法定刑では実刑の壁が厚いことを再認識し動愛法44条の罰則強化を求める署名活動を行い、最終的に約24万5千筆が集められました。

この残酷な所業に対して、世論が怒り、その後の厳罰化の気運が高まったという流れがあります。多くの国民の民意を伝えるために、法改正のタイミングに徹底的にロビー活動を行いました。そして2019年に「動物愛護管理法」が改正されました。

殺傷罪の罰則が、2年以下の懲役又は200万円以下の罰金だったところ、5年以下の懲役又は500万円以下の罰金へ。そして今まで虐待や遺棄をした場合に100万円以下の罰金だけでしたが、1年以下とはいえ「懲役刑」が追加されました。「厳罰化」について、粘り強く勝ち取った意味のある一歩かなと自負しています。