厳罰化後の事件

――そんな中、2021年には長野県で、至上最悪の動物虐待事件が起きていることが明らかになりました。

3年前、内部を知っていた元関係者の通報により、私たちがその繁殖業者を刑事告発する運びとなりました。現場では、高く積み上げられたケージにそれぞれ2、3頭の犬が入れられ、糞尿が上段から垂れ落ち、世話はもちろん行き届かず死体も多数出ていました。

そして獣医師免許を有しないその繁殖業者は、こともあろうに出産間近の母犬の手足を縛り、無麻酔でお腹を切り裂いて仔犬を取り出していました。そうやって産まれた仔犬を何事もなかったかのようにペットオークションに出品していたという事件です。たった数人で世話していた約1,000頭もの犬が非常に劣悪な環境で痛みと恐怖に耐えながら長きに渡り置かれていました。

――しかしその繁殖業者に対し、5月10日に下った判決結果は「懲役1年、執行猶予3年、罰金10万円」という軽微なものでした。

私たちは、せめて6ヵ月でも実刑判決が下ることを望んでいたので、この判決に対してとても失望しています。実刑判決を望む人たちの5万筆の署名があり、また厳罰化後の事件だった上での結果だったので、尚更のことです。

「虐待罪」だけでなく、Evaがもとめた「殺傷罪」が追起訴されたのはよかったのですが、無資格無麻酔で帝王切開したにも関わらず目的自体は不当なものとはいえないという判決文には到底納得がいかない。お金のため、私利私欲で動物を傷つけ苦しめた事に対して「不当ではない」とどうして言えるのか、私たち市民と司法の感覚の違いにいつも無力感を感じます。