2基のお墓のうち1つは、元夫の両親とその親族が眠っているお墓。もう1基には、舅の兄家族が入っている。そちらのお墓は継承者がいなかったので、阿部さん夫婦が守っていた。
「2基あると、檀家としてとにかくお金がかかるんですよ。毎月住職さんがお経をあげに来るので、そのたびにお花やお菓子を用意し、お布施も払わなくてはいけません。年に数回ある講や大きな行事の際はお寺にお手伝いに行き、お布施も払う。お手伝いはもちろん《嫁》の仕事です」
お寺が駐車場と納骨堂を新設する際には檀家に寄付が振り分けられ、阿部家も50万円払った。
「仙台に引っ越して1年後、思い切ってお寺に行き、合葬にしたいと住職さんに言ったんです。すると『お墓があるじゃありませんか』と一言。『お墓があるのに合葬にするなんて、なんと非常識なことを』と言われたような気がしました。私は遠くに住んでいるし、2人の娘は東京、私と息子は仙台で暮らしていると事情をお話しし、永代供養をお願いしても、『うちではやっていません』と、なんとなく怒ったような口調で……。住職が去った後お寺の関係者に、『これ以上、檀家が離れると困るんだ』と言われました」
以来、怖くて住職と話せなくなったという阿部さん。それでも年に1度はお寺から経費の振込用紙が送られてくるので、きちんと払い込んでいたという。
「私は、決して信仰心がないわけではないんです。引っ越してからはインターネットで墓掃除の業者を探して、お盆やお彼岸前には掃除をお願いしました。小さな集落なので、お墓が荒れると、どんな噂を立てられるかわからないし。とにかくお墓の存在が重たくのしかかっていました」