墓じまいを経験した人はなぜ決断し、どのような段階を踏んだのだろうか。「お墓」に翻弄された3人の話を聞いてみると、今の時代の課題が見えてきた
夫の遺骨を合祀墓に 入れようとしたら
札幌市に暮らす村中理沙子さん(72歳)の夫が亡くなったのは2020年10月。生前、村中家のお墓は墓じまいしようと夫婦で話し合っていた。お墓があるのは札幌から高速道路を使って約3時間かかる場所で、豪雪地帯として知られている。
「夫は、墓を守るために子どもがいない家の養子として入り、その家で育ちました。ですから本来なら、結婚しても地元に住み、そこで子育てをし、代々お墓を守っていくことが義務づけられていたんです。でも仕事で道内を転々とせざるをえなかったし、私たちの子どもは2人とも女の子。この先、お墓は守れないので、墓じまいしようと決めました」
地元のお寺からは、毎年8月に札幌まではるばる住職が仏壇にお経をあげにやってくる。村中さんの夫が亡くなる2ヵ月前にも来たが、その際、村中さんの夫は、いつ何があってもおかしくない年齢なので墓じまいをしたいと挨拶したという。住職もすんなり受け入れてくれた。
「その時、費用のお話もされました。お寺さんにはお布施として20~30万くらいをお気持ちで、と。夫が亡くなった翌年、私が墓じまいの手続きをし、お墓を掘り起こす業者さんに16万円、お寺さんに20万円払いました」