親の小言と冷や酒は後から効く

真梨枝さんは事務職で、職務は営業補助です。年がら年中繁忙期で、朝8時の始業と同時に、ばんばん電話がかかってきます。製品を納入している現場の営業マンや取引先から問い合わせが入ったり、納品先に怒られたり、受発注の確認が来たり、製品の発注を手配したり。

コロナで出社が厳しく制限されると、即、在宅勤務に切り替わりました。全社員に携帯とノートパソコンが配布され、真梨枝さんは全ての業務を自宅からすることに。以来、いまも真梨枝さんは在宅ワークを続けています。

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午前8時前には2階の自室に籠もり、夜7時頃まで仕事に集中。昼休みは1階に降りてきますが、45分間なので食事を作る暇はなく、買い置きや作り置きで済ませます。「会社のみんなと一緒に飲みに行くことがなくなったのは、寂しいですよね」

「仕事中は忙しいので、両親のことは放っておいてます」。ずっと実家住まいで、一度も一人暮らしをしたことはありません。バブル華やかなりし頃は、月―金で合コンや飲み会がありました。いつも一緒に参加していた親友が、「さすがに休みたい」と音を上げたほど、連日連夜の連戦でした。

「親の小言と冷や酒は後から効く、って言いますよね。その通りだと思いますけど……」。30代までは、母からしょっちゅう、「いずれ老後に一人じゃ寂しいから、結婚しなさい」と言われました。

もちろん結婚する気はありました。ただ恋人はいても、結婚に至らなかったのです。お互いのタイミングが合いませんでした。「縁ってタイミングですよね」。結果、今まで独身のままです。