定年まで働き続けそう

先日、真梨枝さんは実際に、大手が建てた近所のサ高住に聞きに行ってみました。「65歳から入れます」と言われて喜んだのもつかの間、値段を聞いて大ショック。

「6000万円かかります」

80代とか90歳手前になってから入るなら、もっと安くて済みますが、若いうちからだと相当な費用がかかる、とのことでした。サ高住はピンキリです。話を聞いた物件は高級サ高住だったのでしょうが、真梨枝さんはすっかり意気消沈してしまいました。定年後は早々にサ高住へ引っ越す、というプランは諦めました。

真梨枝さんは、全国展開している大手メーカーの正社員です。地元の短大を卒業し、転勤のない一般職で、1983年に入社しました。職場はJR駅前のオフィスビルの中にある支社です。

真梨枝さんが入社した頃、大企業には、女性は結婚したら退職するという「寿退社」の風習がありました。真梨枝さん自身も、漠然と「2、3年働いたら辞めるのかな」と思っていました。でも、社内には女性への結婚退社プレッシャーはなく、居づらくなりませんでした。本社から転勤で来る社員も、地域採用の社員もいて、仲が良い職場です。

「実家だし、自分一人なら喰っていける、と思ってました」。ずっと働いてきて、ふと気付けば真梨枝さんは、支社で最年長の社員になっています。もちろん上司も年下です。

「入社した時は、会社は55歳定年だったんですけど、途中で60歳になって。それが私が60歳になる年に、65歳まで5年延長されちゃって。いま辞めたら、自己都合退職になっちゃいます。せっかくだから、定年まであと3年、働こうと思います」。入社時の思惑とはまったく異なり、定年まで働き続けそうです。