喧嘩できるうちが華
ただ、介護保険の家事支援は頼めません。真梨枝さんが同居家族だからです。フルタイム勤務でも、公的サービスは使えない決まりなのです。そこで、老化防止のためもあり、両親には出来る家事はやってもらっています。
「ケアマネさんにも、人間は誰でも役割があったほうがいい、って言われたので。体を動かすことにもなりますし」。洗濯物干しと平日の惣菜作りは母の役割で、父も時々、部屋の掃除と洗濯をしてくれます。「結局、あとで私が掃除し直すんですけどね」。
積極的に家事を手伝ってくれていた父ですが、徐々に体が弱り、最近は難しくなってきました。
家族とはいえ、同居していれば、ぶつかることもあります。真梨枝さんは、親との喧嘩はしょっちゅう。つい不平不満が口をついて出ます。先日も、父と言い合いになりました。
「お父さん、薬箱また出しっぱなし! 片付けてって言ってるでしょう!」
その日は、ふだんにも増して食卓が散らかっていました。真梨枝さんは激怒、つい声を荒げてしまいました。父も負けじと言い返します。父も自分も、気が短い同士、言い合いの喧嘩になります。のんびり屋の母が、「まあまあ」と間に入って止め、仲裁しました。
「でも、こんなふうに、喧嘩できるうちが華だ、って慰められるんですよね。まだ父が元気な証拠だって」と真梨枝さんは苦笑します。もし、父がもっと弱ってきたら喧嘩にもならないでしょう。そうなってほしくありません。