管理にお金と手間が掛かりそう

病気のことはさておき、「私は恵まれていると思います」と真梨枝さんは言います。「正社員で働けるし、実家暮らしで持ち家だし。父が家を建ててくれていて、ありがたいですよね」。同世代でも、派遣社員など非正規雇用の女性も少なくありません。

持ち家じゃなくて賃貸だったら、退職後は年金だけでは足りず、預貯金を削って家賃を払う必要があるかもしれません。でも真梨枝さんは実家ですから、老後に大家から追い出される心配も、家賃が払えなくなる心配もありません。

「でも、実家があったとしても住み続けられるんでしょうか。危機感ありありです」。いずれ実家を継ぐのに備えて、真梨枝さんは最近、水道料金や電話代など領収書を見るようにしています。家の維持費がどのくらいかをチェックするためです。

一戸建ては、屋根や壁などのメンテナンスや、庭木の手入れも必要です。家賃は要らないとはいえ、持ち家は意外に管理にお金と手間が掛かりそうです。

『老後の家がありません』(著:元沢賀南子/中央公論新社)

その資金はどうでしょう。真梨枝さんは投資はしておらず、NISAもやっていません。「国がこぞって薦めるのって、うさんくさいじゃないですか。なにか裏がありそうって思って」、今後もNISAを始める気はありません。

ただ、20年以上も給与天引きで、銀行で定期預金を積み立てています。生命保険や個人年金など、会社で薦められた貯蓄性商品も掛けてきました。入社以来、会社の持ち株会に入り、毎月の給与天引きでずっと株を購入してきました。退職後も株は持ち続けられるので、老後にいざ必要となった時に売れば、まとまったお金になるでしょう。