常々、若い頃に戻りたいと思うことはほとんどないけれど、ダンスに関しては今の若い人や子供たちが羨ましい。私の子供の頃は、学校で踊るといえば、盆踊りかフォークダンスぐらいしかなかった。ところが今や、授業の中にダンスが組み込まれているという。

「数学の次はダンスだぞ」

そんな時間割になっていたらどれほど楽しかっただろう。上手に踊ろうとする以前に、恥ずかしいなどと躊躇する間もなく、自然に身も心も音楽に埋没させてみたい。小さい頃からそんな習慣をつけておけば、大人になって街中に出て、音楽を耳にしたとたん、見知らぬ者同士で同じようなステップを合わせながらさりげなく踊り出す。そんな時代になったらいいのになあ。

そんな私の夢を、ズンバは叶えてくれそうな予感がする。

かつて一時期、仕事の関係でフラメンコを習っていたことがある。それは楽しかった。足で床をタンタンと踏み鳴らすときの快感。男性とまったく身体を接触させないのに溢れ出るセクシー感。スタイルの良し悪しも年齢も関係ない。むしろおばあちゃんが踊るフラメンコの華麗さには胸打たれるほどだ。

「よし、生涯、フラメンコを続けるぞ」

そう決意したような覚えがあるが、結局、続けることができなかった。しかしズンバは違う。フィットネスクラブに習いに行かずとも、なんとなく我流で踊っても許されそうな気がする。あとは音楽だ。ラテン音楽を我が家に鳴り響かせよう。さすればいつでも踊れる。どうかしら? 亭主殿に提案したら、「あんまりうるさくしないでね」と釘を刺された。


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